寝たきり予防の高齢者椅子と普通の椅子と何が違うのか?
目次
家具の展示会で、同じ家具業界の方々からも、高齢者の椅子と謳っているが一般的な椅子と比較して何が違うのか?と質問される事が多々あります。
薬の服用量は小児と大人で分量が違います。しかし高齢者の服用量を明記している薬は知っている限りありません、本当に高齢者の量は大人と同じで良いのでしょうか?今世界では高齢者の服用量は大人と同じで良いのか議論されています。
乳児から小学生が使用する椅子は、目的によって形状、機能の違う椅子が市場で沢山販売されています。しかし高齢者の椅子と謳っていても他の椅子とどこが違うのかわからない高齢者椅子が氾濫しています。違いを見せつける為に、あからさまに”年を取ったらこの椅子に!”的な椅子が多いです。何か年を取ることが悲しくなり、余計に落ち込む要素が多いい椅子があります。年を取っても綺麗な普通の人と同じものを使える事が健康寿命を維持する秘訣です。その為に高齢者が使える素敵な椅子が必要です。
展示会場に来場される専門家の方々が、マイスター・ファニチャーの椅子はどこが寝たきり予防の椅子なのか質問されるのは理解できます。よって一般の方が家具の業者から色々と説明されても理解できないのは至極当然だと思いますので、高齢者の生活に必須な美しい椅子がなぜ必要なのかを説明させていただきます。
◆高齢者は理想的な座姿勢を維持することがむつかしい。
理想的な座位姿勢は、上図のように骨盤がわずかに前方に傾斜した状態で位置が安定し、両方の坐骨で左右均等に支えるている姿勢です。
しかし この理想の座位を高齢者は長く維持する事は非常にむつかしい事です。
通常椅子の製造方法は、座板にくずウレタンチップを固めたクッション材をのせ布地を張って作ります。この柔軟性が無い座に座った時に、お尻の坐骨結節部分(椅子に座った時に座面に接し、体重を支える部位)にかかる体重の逃げ場が無いので座っているとお尻が痛くなり姿勢の崩れの原因になります。この製造方法は安価に椅子を作る方法として使用されています。また座にテープ状のウエビングを張って製造する方法もありますが、高齢者のお尻を支える反復力がないので、やはり正しい坐位姿勢は維持できません。
より理想的な座位姿勢を保持できる座・背・枕の椅子用クッションを製造する為にマイスター・ファニチャーはモールドウレタン製法を採用しました。しかしモールドウレタン製法による座は車、電車など色んな所で用いれらている製造方法なので、この製造方法だけでは高齢者が快適に、お尻が痛くならずに座っていられる椅子作りは出来ません。
マイスター・ファニチャーは福祉先進国ノルウェー国のシーテイング技術のノウハウと、弊社が全国600福祉施設に採用された実績で培ったノウハウを活用し理想的な座位姿勢を維持できる座・背・枕の製造を”高耐久性軟質ポリウレタンコールドキュアモールドフォーム”によって、反発弾性が適度であり、耐久性に優れ、低密度であって、振動伝達を低減された軟質ポリウレタンフォームの製造方法に行きつきました。この製造方法によって生産されたクッションは、硬いけれど長時間使っていてもお尻が痛くならず、起き上がる時に”踏ん張り”がきく反発性が出来ました。まさに理想的な座位姿勢を保持出来るクッションが提供できるようになりました。
◆理想の座姿勢を維持する為の工夫(クッション)
背もたれが平らだと、高齢者の場合肩甲骨下部分だけがあたり、上体の保持がしっかりしていない為に、 座への体圧が強くかかります。そのために前にずり下がっていき、座っていることができなくなり、 座っているより、寝ている姿勢が楽なため横になってしまいます。これが寝たきり状態の引き金になります。
マイスターの椅子は背にも高密度モールドウレタンを使用し、両脇の張り出しがバランスの不安定な方をやさしくサポートします。腰の部分は、計算された張り出しとカーブが身体を抱きかかえるように姿勢を保持してくれます、パーキンソン病の方が右に傾く症状を解消できます。
しかし縛り付けられるような窮屈感はありません。
座のクッションも”高耐久性軟質ポリウレタンコールドキュアモールドフォーム”によって製造され、座を作る時にクッション材だけでは出せない弾性と強度をS字バネを取りつける事により、より強くお尻にやさしいい座を作り出すことが出来ます。またS字バネを張る時に座が少し盛り上がるようにして、座った時にお尻の部分がすっぽり入りこむような形状になるので滑り落ちる事がありません。しかしはまり込むような窮屈感はありません。
クッション材は何度も試験を繰り返し理想の硬さに調整して、シーテイングのノウハウを持っているノルウェーのウレタン工場で製造しています。
この”高耐久性軟質ポリウレタンコールドキュアモールドフォーム”で製造された座は、背とは違う硬さで作られ、高齢者が長時間座っていてもお尻が痛くなく、また理想的な座位姿勢が保てる椅子の構成材として使用します。
●クッションに関するコンピューターの座り心地測定結果
坐骨の位置
マイスター・ファニチャーの座圧測定画像
■良い座姿勢の場合
モールドウレタン製法で作った座は、座っていることを意識させません。 コンピューターで測定した体圧分散データーでも、体圧をお尻から大腿部全体に除圧している事が見て取れます。 坐骨を中心にバランスよく体圧が分散しているので、長時間座っていても疲れにくく、正しい座位が保てます。
一般的な椅子構造の測定画像
■悪い座姿勢の場合
一般的な椅子の座構造では、座板の上に沢山のウレタンを乗せても座板が体圧を除圧してくれないために、お尻の坐骨部分に体圧が集中します。
コンピューターで測定した一般的な椅子の体圧分散データーでも、体圧が坐骨に集中していることがわかります。この状態で座っていると坐骨の周辺からお尻が痛くなったり痺れたりしてきます。これは床ずれ円背、神経痛を引き起こす要因にもなります。
理想的な座位姿勢を維持出来る椅子を作る為には座だけ優れていても効果は出ません、やはり背と座の相関関係が大事になって来ます。
座が下から高齢者のお尻の部分を面で支えるのではなく、点で支えるような力強いクッションに座り、座が安定した姿勢で上体を背にもたせ掛けた時何の抵抗もなく包んでくれるような形状と、優しくまた強く支えてくれるクッションが相まって、身体能力が落ちてきた高齢者の方でも心地よく長時間理想の座位姿勢が維持できるようになります。
◆理想の座姿勢を維持する為の工夫(駆動機器)
高齢者の理想的な座位を保つための他の工夫は、どんな病気になっても座れるように体位の変換が出来る駆動機器です。
〇背中を倒すリクライニング機能。
◎座面(座面角度)はそのままで背シートのみが前後に傾く機能。
背もたれを倒すことで高いリラックス効果が得られます。
猫背の方でもクッションを併用することで、最適な座位を確保することが出来ます。
〇自分の気持ちいい角度を作り、その角度で後ろに倒せるティルト機能。(ロッキングチェアの様な動き)
◎座面と背シートが一定の角度を保ったまま前後に傾く機能。
背を倒しても滑らず、皮膚のズレを引き起こしません。
角度を変えず背を後ろに倒せるので、皮膚の弱い方でも背中への負担がかからず体圧分散が出来ます。
〇マルチチェアはリクライニング機能とティルト機能の2つの機能が装備されたハイバックチェア。
上の動きは下図のリクライニング機能とティルト機能が合わさて動いています。
健康寿命を維持するために、健康な方から介助が必要な方まで快適な座りが生涯にわたって出来るように開発された”生涯椅子”です。
加齢による体力の衰えもこの椅子がカバーしてくれます。健康な時の座位と身体機能が落ちてきたときの座位は違ってきます。その時でもこの”生涯椅子”は対応してくれます。まさに生涯にわたって使っていただける健康寿命を支える椅子です。
【マルチチェア】は、一般の車椅子に座ることが難しい身体機能の方や日中ベッドで過ごすことの多い方でも座位保持が可能になる椅子です。
円背や股関節のこわばりなどがある方は、【マルチチェア】のようにティルト機能と合わせてリクライニング機能を使える椅子で座位姿勢が楽になり、寝たきり状態を予防できます。
マルチチェアの特徴
- ティルトとリクライニング機能で体調に合わせて好きな角度に調整できる。
- 椅子上張地が脱着出来、洗濯が出来る。
- 座の奥行が、利用者様の体形に合わせることができる。
- オプションで、座に防水カバーを張ることができる。
- 起き上がり補助バネが付いている。
- 非常に優れた座構造が体圧分散効果を生み、床ずれのある方でも座って治療できる。
- 立ち座りが楽にできる肘形状。
◆理想の座姿勢を維持する為の工夫(利用者の身体にあった椅子寸法)
日常生活のなかで快適に長く座り続け、健康寿命を維持するためには身体と椅子のサイズが合ってる事が大事です。
一般的にお店で売っている椅子は、高齢者のサイズに合わせて選ぶことが出来ません。
座の奥行が合わないと、座の先端が足の膝裏にあたり血行の循環が悪くなって痺れ、むくみの要因になります。自分のサイズに調整出来る椅子を使いましょう。
◎マルチチェア&ハイバックの奥行きの目安。
ハイバックチェアの場合はオットマンを併用するケースが多いので、椅子のリクライニング機能、 ティルト機能、両方の機能を使用する時に、膝関節部分と椅子の座先端部分に余裕ができますので、 座奥行はひざ裏が座先端部に少し触れるぐらいがちょうど良いと思われます。
〇奥行を調整するには 座の下に脚が長い、普通、短い利用者の方に合わせて調整していただける穴が3つあります。年を重ねてお尻が前に出てきてしますようになったらこの穴で調整して適当な奥行にしてください。
◎食堂椅子ライフチェアの奥行きの目安。
〇上画の様に膝裏が強く当たっている場合は下図の金物の4つの穴に自分の座位に適当な穴を見つけ調整してください。
〇下図の様に少し隙間が出来るぐらいの奥行きに調整してください。
◎正しいイスの高さで快適な座り心地
一般に流通している椅子の座面高は42センチ位。この高さは健常なひとにはちょうどでも、お年寄りには少々高すぎます。しっかり腰をいれると踵が浮いてしまい、正しい座位を保てません。
また、逆に低すぎる椅子も体圧が局部に集中するため、すぐに疲れてしまいます。座る人とジャストサイズで初めて゛ラクチン″に座ることができるのです。しかもジャストサイズであれば、身体をしっかり支えてくれるので、どこにも無理がかからず長時間座っていられます。
座面高が利用者様の脚の長さに合わない場合は、奥行き寸法と同じように痺れ、むくみの要因になります。
しっかり腰をいれると踵が浮いてしまい(図A)、正しい座位を保てません。 また、逆に低すぎる椅子(図B)も体圧が坐骨に集中するため、すぐにお尻が痛くなりベッドで寝てしまいます。 座る人に合わせて椅子の座面の高さ、座の奥行を調整して初めて快適に座ることが できるのです(図C)。
弊社ではご利用者様の身体測定をしていただきます。現在ご利用の椅子が低いのか高いのか、膝裏から床までの採寸、お部屋では靴もしくはスリッパ等を履いて生活しておられるのかをお聞きして、最適な寸法に脚をカットして出荷しております。通常の採寸は身長(下半身の関節は少ないので、若い時の寸法採用)÷4=最適寸法ですが、足の長い方、短い方がおられますので、十分な測定の上適当な座面高を割り出す必要があります。
◆理想の座姿勢を維持する為の工夫(立ち座りの安心と快適さのあるデザイン)
立ち座りの動作が楽に出来るよう設計されています。
立ち上がる時、まずお尻を座の前まで移動するのに、肘が握りやすい太さと形状だと楽に移動出来ます。
完全に立ち終わるまで、しっかり握っているいられる肘形状であれば転倒の危険性が軽減され、いつでも気軽に立ち座りが出来るので気分的にも楽しいし、下肢筋力の維持にも役立ちます。
高齢者になって一番心配なのは、身体能力が低下したことが実感としてわからなくなった時に起こる転倒事故、転倒による大腿骨頸部骨折など様々な危険があります。自分はまだ大丈夫を思って無理をしてしまいがちです。しかしこの張りのある、いつまでも元気と思う気持ちを大事にサポートする椅子が健康寿命を維持して生活していく必需品だと思います。ただ便利なだけではなく、気落ちさせない道具が大事な介護用品だと思っております。
◎張地カバーは取り外して洗濯可能出来ます、
張地カバーは、飲み物などをこぼした時、万が一の失禁した場合でも簡単に外せて洗濯ができます。また張地カバーの下には水は通さない防水カバーが張ってあるオプション仕様の座もあります。水分を通さないので、拭くだけで匂いも残りません。洗濯が出来る事で心にかかる心的負担が軽くなるはずです、これも高齢者のバリアフリーです。
長寿が寝たきりの介護につながらない為にも
1995年には、100歳以上の高齢者は僅か6,378人だったのが、 2017年には67,824人になり、22年で10倍以上も多くなり、90歳以上はなんと206万人になりました。医学の進歩もあり、長寿を甘受出来ることは慶賀の至りです。大変皮肉な物言いで申し訳ありませんが、甘受とは「やむをえないものとして甘んじて受け入れる事」とあります。この約7万人の方々の中で元気に生活を送っておられる高齢者の方が何人おられるでしょうか。医術の進歩で生かされているとも言えます。
平均寿命は日本一。でも健康寿命はそうでもない???
最近のデータが入手できないが平成22年度調査で長野県が男女とも平均寿命は日本一です、しかし2016年度調査データーでは日常生活で何も行動に問題の無い健康寿命は男性は山梨県、女性は愛知県です。平均寿命1位の長野県の健康寿命順位男性は20位、女性は27位でした。どの様なことでこの差が生まれるのか、はっきりした理由は見つかっていないようです。
これまでじいさまは平均寿命80歳で、寝込んだら1か月ぐらいでお隠れあそばしました。しかし平均寿命が伸びて100歳の時代になると「老人」は「問題」と捉えられる、病気、寝たきり、介護と長寿が社会問題になり、せっかく長生きできても本人は寝たきりで「死んだほうがまし」と考え、介護する家族は毎日 本人以上に憂鬱な生活を送ることになります。今話題になっている100歳以上の行方不明もこのような問題の延長線にあるのはないでしょうか。日本の経済状況から、100歳の高齢者が増えていけばこれからの後期高齢医療費、介護保険料がいままで通り支給される事はないと考えなければなりません。 これからは自分達のことは自分達で、どうすれば家族が悩まずに済むか考えていく事。介護の経費はトータルで見て、どうすれば楽しく、どうすれば安く済むか考える事だと思います。
我々の提案は非常にシンプルです。
朝起きて夜寝るまで、自分が苦なく過ごせる”居場所”を確保し楽に座れる椅子に座って健康寿命を維持して日常生活を送ることです。この座って過ごす事により内臓の機能が活性化し、本来人間が持っている“自然治癒力”を高めてくれます。寝た生活を送ると内臓の機能が低下し、筋力低下、便秘、認知症等の症状をおこしやすくなります。立ち座りの楽な椅子で、下肢筋力を維持しましょう。毎日の日常生活を自分の足でこなせる事が、元気で長生き出来る秘訣です。
高齢者は今後、他人をあてにしないで自分の事は自分で行っていく精神が必要だと思います。そのためにはどうしたら昔の様に平均寿命と健康寿命の差を短くして終末期を迎える事が出来るのか真剣に考える時期は”今でしょう”
会社の定年は70歳、年金の受け取りは70歳からの時代に政府も踏み切る事によって少子化による労働不足に解決の道を見いだせるのではないでしょうか!